渋谷エリアは新築の大規模賃貸事務所が目白押し

現在、渋谷駅エリアで大規模な再開発が進行中です。この再開発は東京オリンピックが開催される2020年を目途に完了予定であり、その頃には渋谷の街が大きく変貌を遂げていることが予測されます。これ以前にも、渋谷には2000年竣工の渋谷マークシティ、2012年竣工の東急文化会館跡地に建設された渋谷ヒカリエ等、大規模賃貸事務所が増加してきていました。渋谷ヒカリエは、現在では渋谷エリアのランドマーク的存在となっています。
そして現在、新たに複数の大規模賃貸事務所の再開発プロジェクトが進められています。どのようなプロジェクトなのか順番にみていきましょう。
渋谷スクランブルスクエア現在進行中の渋谷の再開発の中で最大規模のプロジェクトです。地上47階、高さ約230mの超高層ビル(東棟)をメインとした巨大な複合施設が建設されます。東棟、中央棟、西棟の3棟から構成され、最も早い東棟の完成は2019年。国道246号線と明治通りの交差する付近に建設されています。西棟はJR渋谷駅を挟んで向かい側の国道246号線沿い、現在、渋谷駅西口バスターミナルがある場所に建設予定です。中央棟は、東棟と西棟の間のJR渋谷駅真上に建設されます。この中央棟は線路上をまたいで、将来ハチ公口まで伸びてくる予定です。現在のスクランブル交差点と近接することから、「渋谷スクランブルスクエア」の名称が付けられました。東棟には渋谷エリアで初となる有料展望台が設けられる予定です。

・渋谷ストリーム
渋谷川沿いの東急東横線跡地に2018年秋、地上35階建て、高さ約180mの超高層ビルが竣工します。オフィスのほか、商業施設やホテル、交流施設が入居する複合施設で、コンセプトを「クリエイティブワーカーの聖地」とし、4階にはコワーキングスペースが設けられます。渋谷ストリームが建設されているのは渋谷エリアで唯一川が地上に顔を出している空間。オフィスワーカーにとって水の流れを間近に感じられる都心のオアシス的存在となりそうです。

・道玄坂一丁目駅前地区
旧東急プラザ渋谷跡地及び隣接街区にオフィス、商業施設の入居する地上18階建て、高さ約120mの超高層ビルが建設されます。竣工予定は2019年秋で、1階には空港行のリムジンバスも発着するバスターミナルが併設されます。コンセプトは「小さな物語の集積」。これまで様々な流行やカルチャーの発信地であった渋谷の街が持つエネルギーを凝縮したような斬新な外観デザインに仕上げられる予定です。渋谷駅西口の新たな玄関として注目を集めることになるでしょう。

・渋谷駅桜丘口地区
東急不動産が手掛ける渋谷駅南西部、桜丘地区の再開発事業によるプロジェクトです。A棟、B棟から構成されるオフィス、商業施設、住宅、起業支援施設が入居する超高層ビルが2020年を目途に竣工予定となっています。この「住む」「働く」「遊ぶ」を兼ね備えた複合施設の建設により、国際都市としての渋谷をさらに強化することが目的とされています。

・宇田川町15地区(パルコ建て替え)
2019年10月に新生渋谷パルコが誕生します。商業施設のほか、オフィス、劇場、展示場等が入居予定で、次世代のグローバルショッピングセンターとして生まれ変わります。この新しいパルコのビルは地上19階建て、高さ約100mになる予定です。

・南平台プロジェクト
東急不動産が入居していた南平台の新南平台東急ビル等4棟をまとめて建て替えるプロジェクトです。大規模な賃貸事務所として2019年3月に完成予定で、低層部にはインキュベートオフィス等の産業施設が入居する予定となっています。建物は地上21階建て、高さ約107mで、3階から20階の各テナントのオフィスにテラスを設けるほか、21階には庭園やラウンジを設置し、オフィスワーカーが快適に働くことのできるオフィスが実現されます。

・渋谷区宇田川町計画(Abema Towers)
現在、10箇所に分散されているIT企業大手の株式会社サイバーエージェントが2019年2月に2箇所に集約されます。その1箇所の移転先が渋谷区宇田川町に建設される地上21階建て、高さ約111mのAbema Towersです。もう1箇所は前述の渋谷スクランブルスクエア。Abema Towersには本社機能、メディア事業、ゲーム事業が移転予定となっています。

・渋谷区道玄坂二丁目開発計画
地上28階建て、高さ約130mの超高層ビルが2022年4月に道玄坂2丁目に竣工予定です。再開発事業を手掛けているのはドンキホーテホールディングスで、店舗、オフィス、ホテル等が入居予定となっています。

上記の再開発は賃貸事務所の建設に関連した事業ですが、この他にも渋谷区役所建て替えプロジェクトや宮下公園の整備事業等が渋谷エリアにて進行しています。
かつては多くの若者が行き交い、ファッションや音楽、文化など流行の発信地だった渋谷は、あまり大人の街というイメージはありませんでした。しかし、近年の再開発により複合施設や賃貸事務所が多数建設されたことにより、街の様相も大きく変化しています。特に、クリエイティブ・コンテンツ産業にとって、渋谷の再開発による進化は大きな影響をもたらすでしょう。若者だけでなくオフィスワーカーにとって注目の街となっていく渋谷から今後も目が離せません。

目覚ましい成長を遂げているIT企業は渋谷を好む

渋谷の街並み

渋谷の街並み

1990年代後半に日本でインターネットが普及して以降、IT関連企業の成長が止まりません。この1990年代後半から2000年代初頭にかけてはITバブル時代として知られ、渋谷にITのベンチャー企業が集結しました。この時代の渋谷は「ビットバレー」と呼ばれたことでも有名です。「ビットバレー」の名称は、アメリカ、カリフォルニア州のサンフランシスコに位置するIT企業やベンチャー企業が集結するエリア「シリコンバレー」に由来しています。IT関連企業が集中する渋谷の「渋(bitter)」と「谷(valley)」を組み合わせて、「Bit Valley」と呼ばれるようになりました。
しかし、その頃の渋谷の賃貸事務所の多くは小規模なオフィスビルでした。事業が拡大するにつれて、オフィスが手狭になってきた企業も多く、2003年の六本木ヒルズの開業により、渋谷で成功を収めたIT企業が続けてヒルズへと移転をしていくことになります。そのため、渋谷がIT企業の集まる街であるというイメージは次第に薄くなっていきました。しかし、現在でもミクシィやサイバーエージェント、GMOインターネット、LINE、DeNAなどの多くの一流IT企業が渋谷に拠点を構えています。そして、その渋谷に、現在再びIT企業が集結し始めているのです。2017年、Googleの日本法人が2019年に六本木ヒルズから移転することを発表しました。移転先は2018年に竣工予定の渋谷ストリームです。渋谷ストリームは、渋谷川沿いの東横線跡地に誕生予定の大規模複合施設です。渋谷エリアの中で唯一、川が地上を流れる空間に立地予定で、まさに都会のオアシス的存在となりそうです。
そもそも、1990年代後半に渋谷にIT企業やベンチャー企業が集結した理由には、様々な理由があります。当時の渋谷は常に多くの若者が行き交うファッションや音楽、カルチャーなどの流行の発信地でした。さらに、渋谷には以前から映像・広告・出版等のクリエイティブな事業を展開する企業が集結していました。スーツに身を包んだオフィスワーカーが行き交うオフィス街、丸の内・大手町とは異なり、この渋谷の自由な雰囲気は新しい事業を興そうとしているIT企業家やベンチャー起業家の目に魅力的に映ったのでしょう。さらに、渋谷は副都心としても知られ、渋谷駅は山手線をはじめとしたJR各線、京王井の頭線、東急東横線、東京メトロ銀座線、半蔵門線、副都心線などの多くの路線が乗り入れるビッグターミナルです。東京都心においても、特に優れて交通の便が良いことも賃貸事務所を構える場所としては大きなメリットになるのです。
以上のような要素が相まって、渋谷にIT企業やベンチャー企業が集結していったことが考えられます。あるIT企業が渋谷に拠点を置くことが、また新たな企業を呼び込むことにも繋がり、「ビットバレー」と呼ばれるムーブメントを巻き起こしていったのでしょう。
前述したGoogleの日本法人は、もともと東急セルリアンタワーに拠点を置いていました。事業の拡大により手狭になったことで、六本木ヒルズに移転しましたが、2019年に再び渋谷に戻ってくることを明らかにしています。東急セルリアンタワーには現在GMOインターネットが入居しています。2012年には渋谷ヒカリエにDeNAが入居。さらに、2019年にはミクシィが現在建設中の渋谷スクランブルスクエアにオフィスの集約を予定しています。
また、今後、渋谷では大規模な再開発事業が予定されています。Googleが渋谷に再度移転することに決めた背景にも、渋谷の街が今後整備されると共に、大規模賃貸事務所が増加していくことが関係していると言われています。2027年までに渋谷エリアで予定されている再開発事業は10件以上に及び、今後もGoogleのように他の場所から渋谷に移転するIT企業が増えていくことが予想されます。
さらに、渋谷では近年、コワーキングスペースの増加が顕著です。IT系のノマドワーカーもこのコワーキングスペースを多数利用しており、その場で出会ったノマドワーカー同士が連携して新しいビジネスを生み出す機会も少なくありません。これらのコワーキングスペースの増加に伴って、クラウドソーシングサービスの大手ランサーズやクラウドワークスも渋谷に拠点を移転しました。
新しいことへの挑戦に適した自由な風土を持つ渋谷。これからもクリエイティブ事業を展開する企業やIT関連企業がさらに集結してくるのではないでしょうか。