世界一複雑な東京の路線網

東京の路線網は、世界一複雑かつ充実していると言われています。オフィス街を形成する千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区辺りの都心では、至る所に鉄道の駅が存在しています。そのため、それらのエリアは通勤に大変便利で、賃貸オフィスニーズも大変高くなっています。多くの鉄道路線が走っており、都心内での移動はもちろん、関東近郊をはじめ日本各地へのアクセスが便利で、取引先との往来もしやすいことは、東京にオフィスを構える大きなメリットです。

東京を走る多数の鉄道路線の中で、最も有名なのはJR東日本の山手線でしょう。山手線は、品川駅と田端駅間を環状運転しており、東京駅をはじめ、上野駅、池袋駅、新宿駅、渋谷駅等のターミナル駅に乗り入れています。これらのターミナル駅周辺には繁華街と共にオフィス街が形成され、オフィスビルや複合施設等の立地が目立ちます。また、山手線以外の代表的なJR路線としては、神田駅・代々木駅間を走るJR中央本線、錦糸町駅・御茶ノ水駅間を走るJR総武本線があります。さらに私鉄でも、新宿駅・京王八王子駅間を走る京王線や渋谷駅・吉祥寺駅間を走る京王井の頭線、泉岳寺駅・品川駅間を走る京急本線、大井町駅・二子玉川駅間を走る東急大井町線、五反田駅・蒲田駅間を走る東急池上線等が挙げられます。他に、都心のターミナル駅と関東近郊県内の駅を結ぶ鉄道路線もあります。新宿駅と神奈川県の小田原駅間を走る小田急小田原線、西武新宿駅と埼玉県の本川越駅を繋ぐ西武新宿線、池袋駅と埼玉県の吾野駅間を結ぶ西武池袋線等は、その代表的な鉄道路線です。さらに、東京には複雑な地下鉄路線網が存在します。東京の地下鉄は東京メトロと都営地下鉄に分けられますが、それぞれ複数の鉄道路線を有し、都心を中心に東京都外まで続く地下鉄路線もあります。地下鉄が乗り入れる駅には、日本を代表するオフィス街を周辺に形成している街もあります。地下鉄から地下鉄を乗り継いでオフィスに向かうビジネスマンも多く、朝や夕方の通勤時間帯には、これら地下鉄の駅のホームや改札で通勤客が列をなして順番待ちをしている光景もよく見られます。それでは、東京を走る複雑な地下鉄路線とオフィス街について詳しくみていきましょう。

東京の路線図

東京メトロには、渋谷駅・浅草駅間を走る銀座線や北千住駅・中目黒駅間を走る日比谷線、池袋駅・荻窪駅間を走る丸ノ内線、綾瀬駅・代々木上原駅間を走る千代田線、渋谷駅・押上駅間を走る半蔵門線等があります。これらの鉄道路線はターミナル駅に発着している場合が多く、地下鉄から他の私鉄やJRに乗り継ぐことができます。これは、新宿駅・本八幡駅間を走る新宿線や新宿駅・光が丘駅間を走る大江戸線等の都営地下鉄の場合も同様です。前述の通り、地下鉄路線の途中に位置する駅周辺にはオフィス街が形成され、多数の賃貸オフィスが存在しています。
銀座線では虎ノ門駅や新橋駅、日本橋駅周辺を中心にオフィスビルが林立し、規模の大きいオフィス街を形成しています。日比谷線においても、恵比寿駅や六本木駅をはじめ、霞ヶ関駅、日比谷駅、そして秋葉原駅周辺は多数のオフィスビルが建ち並ぶエリアです。さらに半蔵門線上の永田町駅、半蔵門駅、大手町駅周辺もオフィス街となっています。これらの地下鉄の駅の多くは複数の地下鉄路線が乗り入れているのも特徴で、あらゆる方面へのアクセスが便利なメリットがあります。例えば、半蔵門線の乗り入れ駅である大手町駅には、他に東京メトロ丸ノ内線、千代田線、東西線、都営地下鉄三田線の計5本の地下鉄路線が乗り入れています。大手町駅は東京駅の最寄り駅としても知られ、駅周辺には、都内でも有数の大規模なオフィス街が形成されています。

このように、東京を走る地下鉄の駅周辺はオフィスビルも多く、あらゆる方面へのアクセスが便利であることから賃貸オフィスのニーズが大変高くなっています。また、東京には複数の新幹線が走っています。線路の名称上では、東京駅・新大阪駅間を結ぶ東海道新幹線と東北新幹線のみですが、東北新幹線を経由して、山形新幹線、秋田新幹線、上越新幹線、北陸新幹線、北海道新幹線が走っています。東京には、このようにJR在来線、私鉄、地下鉄の鉄道路線が絡み合うように走っているほか、長距離移動が可能な新幹線によって、日本の各地にアクセスすることができます。通勤や近場の取引先との往来はもちろんのこと、地方出張等もしやすく、オフィスを構える場所としてのメリットが大きいため、都心には複数のオフィス街が形成されています。また、交通網の発達した東京は、賃貸オフィスのニーズも常に高く、規模を問わず多数のオフィスビルが存在しているため、希望に合った物件を見つけやすいエリアでもあります。エリアやビルのスペックによって賃料は異なりますが、交通利便性の良さを生かした物件探しをするのには日本でも最適な場所だと言えるでしょう。

不動産業を営むために欠かせない宅地建物取引士の資格と業務内容

宅地建物取引士画像

■不動産業を営むうえで欠かせない資格

不動産売買や不動産賃貸業など宅地建物取引業を営む場合には、宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けなければなりません。
免許を授かるにあたっては、営業する事務所をはじめ、国土交通省令で定める場所ごとに事務所の規模や業務内容に応じて、国土交通省令で定める人数の専任の宅地建物取引士を置くことが義務付けられています。
たとえば、事務所の規模によっては最低でも1人が必要ですが、オフィスビルの賃貸や売買など大規模な不動産事業を営む事務所では、ほぼすべてのスタッフが宅地建物取引士の資格を取得しています。
新卒で入社、あるいは中途採用で転職をしてまだ資格を持っていない場合、まずは自社で研修を受けるか、専門学校に通わせてもらうなどして資格を取得するところからスタートするのが一般的です。
試験日は毎年1回、10月の第三日曜日に開催されるのが通例です。
過去10年ほどの合格率は15%~17%であり、決して簡単な試験ではありません。
ですが、不動産会社に勤める以上、資格を取得しないと同期と差がついたり、業務の中でもできないものが増えたりしてしまいます。
宅地建物取引士の資格を取得すれば、自分に自信がつくのはもちろん、物件を探している方へのアドバイスなどもしやすくなり、オフィスビルの売買契約や賃貸契約の契約当事者に立ち合い、売主や貸主のオーナーに代わって重要事項の説明を行うなど、責任ある重要な任務も遂行できるようになります。

■宅地建物取引士になるまで

宅地建物取引士とは宅建業法で定める宅地建物取引士資格試験に合格し、試験を実施した都道府県知事の資格登録を受け、都道府県知事の発行する宅地建物取引士証の交付を受けた者を指します。
単に試験に合格しただけでは足りず、都道府県知事に資格登録の申請を行い、受理されて資格証明書の発行を受けなくてはなりません。
試験に合格しても、実務経験が2年未満の場合、実務講習というのを受けないと登録が認められません。
不動産会社に勤務しているなど宅建業に従事している場合は、試験を受ける前に登録講習を受けることで、試験の一部免除が受けられます。
従事者が試験に合格した場合、既に2年以上の実務経験があれば、すぐに登録申請が出せます。
一方、入社して間もないなど実務経験が2年に満たない場合は、やはり実務講習を受けて都道府県知事への登録申請を行わなくてはなりません。
なお、登録をして資格証が発行されれば、宅地建物取引士の資格自体は除名事項などに該当しない限り、一生有効です。
ただし、都道府県知事が発行する宅地建物取引士証の有効期間は5年しかありません。
継続的に宅地建物取引士として宅建業務を行っていくためには、5年ごとの更新が必要です。
そのためには都道府県で実施される法定講習を5年ごとに受け、再度、登録申請をして新しい宅地建物取引士証を受けなくてはなりません。

■宅地建物取引士の行う業務

オフィスビルを探す際に、希望条件をヒアリングして相談に乗ってくれたり、物件を探してくれたり、物件を案内してくれたりするお仕事は、実は宅地建物取引士の資格を取得していなくてもできます。
小さな不動産会社や賃貸住宅の案内を行うスタッフの中には、学生アルバイトや資格のないスタッフが含まれているケースは少なくありません。
一方、オフィスビルの投資や売買、賃貸など高額な金額が動くケースやクライアントからの要求が高度になる取引ほど、宅地建物取引士の資格を取得したスタッフが対応するケースが増えます。
大手の不動産会社や規模の大きな事務所であれば、オフィスビルを扱えるのは宅地建物取引士の資格を取得して、都道府県知事からの宅地建物取引士証を受けたものに限定されるケースがほとんどです。
そのため、相談もしやすく、プロとしての適切なアドバイスが受けられるほか、条件交渉や契約手続きも安心して任せることができます。
宅地建物取引士でないとできない業務として、宅建業法第35条に定める重要事項の説明と重要事項説明書への記名押印および同第37条に定める契約書面などへの記名押印があります。
オフィスビルの売買や賃貸契約を結ぶ際に、必ず行われる重要なルールですが、これは宅地建物取引士の資格がないとできません。
宅地建物取引士の試験に合格するための勉強や各種の講習などを通じて、不動産の売買や賃貸時に取り交わす契約書に記載されているトラブルが起こった場合の処理方法などのノウハウも学んでいます。
また、トラブルを未然に防ぐためのコンプライアンスに基づく対応や不動産取引の慣例から、売買価格の決め方や賃貸料の決め方、手数料の計算法なども習得しています。
また、不動産購入の際にかかる税金制度のことやオフィスビル賃貸時の仕分け法など税務や会計に関する知識にも詳しく、一般的な範囲でアドバイスやコンサルティングも可能です。
土地・建物の安全性や耐久性といった不動産の物件に関する知識も、専門書や講習、実務経験を通じて習得していきます。

 

古書の街として知られる神保町

神保町画像①

■神保町といえば古書

一般的に神保町と呼ばれるエリアは、正式には神田神保町といい、東京都千代田区にあります。
神田神保町1丁目から3丁目までのエリアのことをいい、江戸時代の旗本であり、幕臣の神保長治の屋敷があったことから、神保町の名がついたという由来を持つところです。
神保町といえば書店街として知られている通り、その特徴に古書店が多いことが挙げられます。
今では手に入れることのできない絶版本から、マニアックな同人誌など、幅広いジャンルの古書を扱う書店が軒を連ねていて、古書店の数としては世界最大規模とされているほどです。
小さな古書店から比較的大きな店まで、とにかく古書店が多いため、遠くからはるばる神保町にお目当ての本がないか探しに来る人も珍しくありません。
神保町が書店街と呼ばれる理由は、世界最大規模の古書街が形成されているだけでなく、新刊を扱う書店、さらには出版社から出版問屋の取次店なども集まっているためです。
これら出版に関係する会社や店が集まっていることから、古くから神保町といえば書店街というイメージができ上がりました。

■書籍だけではない神保町の魅力

神保町というと古書のイメージが抜きんでていることもあって、本が好きな人以外は魅力のないところかというと、そうではありません。
近年大いにブームとなっている登山や年代を問わずスポーツを楽しむ人が増えていることから、登山用品専門店やスポーツ用品専門店も軒を連ね、趣味を楽しむための買い物ができる商業エリアとなっています。
スポーツ用品店街は、隣接する神田小川町の方が多いものの、神保町にも数多くあります。
同じく隣接する御茶ノ水は楽器店街として知られていますので、楽器を見るついでに新刊・古書を問わず、書店街の神保町に足を運び、楽譜を買い求めるといった需要も多いでしょう。
これらの趣味関係の店が多いのは、神保町エリアとその周辺に大学が非常に多いことが関係しています。
明治大学に法政大学、日本大学に順天堂大学と、さまざまな大学が神保町とその周辺エリアに固まっており、必然的に予備校や資格を取得するための専門学校なども集まり、学生街となっていることから、趣味の店も増えたと考えられます。

神保町画像②

■ビジネスの拠点としての神保町

神保町は裏路地文化の街ともいわれ、大通りの靖国通りと白山通りには出版社をはじめとする店や会社があるものの、少し奥へ入ると非常に狭い路地が入り組んでいるため、ビジネスの拠点となる賃貸オフィスが多くなっています。
街の防災という点で大きな不安があった神保町は、再開発によって神保町三井ビルディング、東京パークタワー、そして神保町101ビル3棟からなるジェイシティ東京が誕生し、細かく分断された路地に密集した住宅の大規模な整備が行われました。
神保町三井ビルディングが地上23階地下3階、東京パークタワーが地上29階地下3階、神保町101ビルが地上12階になっており、ランドマーク的存在で、さまざまな大手企業がテナントに入居しています。
しかし、その他のオフィスに関しては入り組んだ街の構造から、神保町はどちらかというと大きな企業が進出する街というよりは、出版関係や小規模の事業形態のオフィスが多かったという特徴は、それほど変わっていないといえるでしょう。

■駅近くに賃貸オフィスが多数見つかる神保町

神田神保町の最寄り駅は、都営地下鉄三田線と新宿線、東京地下鉄半蔵門線のいずれも神保町駅で、この周辺には多くの賃貸オフィスがあります。
都営新宿線の小川駅からも、神保町駅周辺の賃貸オフィスへのアクセスはよく、場所にもよりますが、神保町駅からは徒歩3分、対する小川駅からは徒歩6分といった具合です。
およそ倍の時間にはなるものの、非常に遠くなるというわけではないため、小川町へのアクセスがよい人にとっては、通いやすい賃貸オフィスが数多く見つかるのが特徴です。
賃貸オフィスの形状もさまざまで、1階部分は店舗兼事務所として使える設計になっているほか、上階部分は店舗スペースなしのオフィスとして使えるものや店舗経営も可能な賃貸オフィスも見つかります。
あるいは、SOHOやパソコンを使って1人で仕事をするフリーランス向けに、プライベートスペースを提供する賃貸オフィスもあり、無料で使えるインターネット環境を整えているほか、郵便ポストもありますので、法人登記も可能です。
レンタルデスクと呼ばれる賃貸オフィスで、ワンフロアに10ほどの1人用のデスクとスペースを取った部屋が並び、一部に2人で使える若干広めの部屋もあるといった構造です。
フロアにはトイレと洗面所があり、共有スペースとして靴箱から本棚などが置かれた部屋が作られており、1人で仕事をするのに最適な賃貸オフィスとなっています。
ワンフロアを借りるタイプの賃貸オフィスの場合は、エレベーターを降りてエントランスからオフィスへ入る構造の場所が多く、オフィス内にトイレと洗面所、休憩のときなどにお湯を沸かせるよう、給湯スペースなども設備されています。
複数のスタッフが仕事をするのに適した賃貸オフィスとなっていることから、規模や仕事の内容によって選び分けられるのが、神保町の賃貸オフィスの特徴です。

複数路線にアクセス可能な神保町駅周辺のオフィス情報

賃貸事務所の選び方

オフィスを移転する時、起業して新規でオフィスを借りる時、何を優先して賃貸事務所を選べばよいのでしょうか。各企業によって優先する条件は異なりますが、自分の会社が何を目的として、新しく賃貸事務所を借りるのかきちんと把握しておくことは、オフィス選びの成功に繋がります。今回は、賃貸事務所を選ぶ上でポイントになってくる条件等をご案内していきます。

賃貸事務所を選ぶ際には以下のような条件が自分の会社に適しているかを見極める必要があります。順番にみていきましょう。

・立地条件従業員がアクセスしやすい物件であることが大切です。最寄り駅の乗り入れ路線等を確認しておきましょう。その他、近くにコンビニや飲食店、郵便局、金融機関等があるか、騒がしくはないかなど周辺環境もしっかり確認が必要です。

・契約面積契約面積のうち、実際にオフィスとして使用できる面積の坪数を確認しておきましょう。契約書によって専用面積のみが記載されている場合と専用面積+共用面積の一部が含まれている場合もあります。一般的には、従業員数1人に対し、約1.5坪あれば余裕をもって仕事ができるでしょう。その他にも、必要であれば会議室や応接室のスペースが取れるか等の確認が必要です。

・コスト
賃貸事務所を借りる前にコストの上限を決めておくようにしましょう。毎月発生する費用には、家賃の他に共益費が必要です。その他、契約内容によって水道光熱費や清掃費等が発生する場合もあります。また、ランニングコストといって、契約時には敷金(保証金)、礼金、前家賃、前共益費、仲介手数料、火災保険料等が発生します。物件によって保証委託料が必要な場合もあるので、契約時に幾ら必要なのかを事前に確認しておくことが大切です。

・物件イメージ
毎日通う場所であるからこそ、賃貸事務所の外観やエントランスの内装、雰囲気等も大切です。来客の多い企業様は特に取引先が賃貸事務所に訪れた時に受ける印象についても想像しておくと良いでしょう。物件のイメージが企業のイメージに繋がることもあります。

・設備
実際に仕事をする場所であるオフィス内の設備についてもしっかり確認が必要です。天井高が低いと圧迫感を覚えます。天井高2.7~2.8mあると開放感が感じられるでしょう。また、OAフロアが採用されているかも大切なポイントです。OAフロアであれば床上の空間にネットワーク配線を収納できるため、イスなどを動かした時に断線したり、配線が絡まったりすることを避けられます。さらに、パソコンや複合機等を頻繁に使用する場合には、ネットインフラや電気容量が十分かを確認しておくことも大切です。他にも、電話回線の本数や耐荷重が足りているか、空調システムが個別であるか等についても事前に確認しておくことで、入居後スムーズに仕事をスタートすることができます。また、トイレの設置場所や男女別かどうか、給湯室の場所や広さ、喫煙スペース・リフレッシュスペースの有無も確認しておきましょう。その他、共用部の設備として、エレベーター、駐車場の有無、セキュリティ、耐震設備についてもチェックしておくことをおすすめします。

・他の入居テナント
検討している賃貸事務所に、他にどのようなテナントが入居しているかも確認しておくようにしましょう。1階に飲食店が入居している場合にはランチ等に利用できる反面、匂いが気になる可能性もあります。入居しているテナントによって、物件のイメージが変わり、評価も変わってきますので、必ずチェックしておきましょう。

以上のような条件の中から、自分の会社が何を優先事項とするのかをしっかり決めておくと、入居後に満足いく賃貸事務所を選べる確率が高くなります。また、インターネットで情報を集めるだけでなく実際に物件に足を運んでみることも大切です。気になる物件があったら不動産会社に問い合わせをして内見を申し込んでみましょう。内見時のポイントは、上記に挙げた条件の優先項目をしっかり満たした物件であるかをよく確認することです。長く入居する予定であるなら、物件のオーナーの人柄も大事になってきますので、不動産会社の営業マンに聞いてみると良いでしょう。入居後に後悔しないよう賃貸事務所の選び方をしてくださいね。

保証会社とは

中小企業が賃貸事務所を借りる場合には連帯保証人が必要となるケースが多くあります。法人が賃貸事務所を借りる際には、法人名で契約をして法人の代表者を連帯保証人とする場合が多いですが、起業したばかりの会社や企業規模が小さい場合など、物件のオーナーや不動産会社が不安に感じる場合には保証会社への加入が求められるのです。今回は、賃貸事務所の契約時に保証会社を利用するケースについてみていきましょう。

保証会社とは、物件の借主が家賃を滞納した時などに連帯保証をする会社のことで、滞納した賃料を立て替えて支払います。昨今では、賃貸事務所を借りる際に保証会社への加入が義務付けられることも増えてきました。与信のある一部の上場企業は免除されることもありますが、中小企業で与信能力が低い場合や起業したばかりの企業では保証会社への加入が契約時に必要となることも多くなっています。法人が賃貸事務所を借りる際、契約名義は法人名、連帯保証人は法人の代表者とするのが一般的です。法律上では法人と代表者は別人だとして、このような処置が認められていますが、法人と代表者は実質同一であると考える物件オーナーが多いのも事実です。そのような場合には家賃滞納のリスクを軽減するために借主に対して保証会社への加入を求めてくることがあります。その場合、保証会社によって金額は異なりますが、契約時に保証金や前家賃、仲介手数料に加えて保証会社への保証料を支払うことになります。保証料の金額は家賃の30~100%、また更新時にも更新保証料が必要で、家賃の10%程度の支払い額となるのが一般的です。通常、加入する保証会社は借主側で選択することはできません。 物件の契約時にはただでさえ、大きなコストがかかるため、できることなら保証会社への保証料は支払いたくないのが本音でしょう。しかし、デメリットだけではなく、保証会社に加入することで与信能力の低い企業でも賃貸事務所の入居審査に通りやすくなるなどのメリットもあります。

一般的に次のような条件に当てはまる企業は物件の契約時に保証会社への加入を求められるケースが多くなっています。

・起業から5年未満会社を起業してから年数が浅いと事業が安定して軌道に乗っているのか判断がつかないため、与信能力を不安視されがちです。起業後、おおよそ10年が経過していると安心してもらえることが多いようです。

・従業員数が10人未満会社が小規模であるとオーナーによっては企業の与信能力を信頼してもらえない場合もあります。

・収益が不調賃貸事務所の契約時には決算書の提出が必要ですが、収益が年々下降している場合や債務が多い場合には保証会社への加入を求められることが多くなります。

・仲介の不動産会社が大手物件の仲介を行う不動産会社が大手企業である場合には、保証会社への加入が必須条件となっていることもあります。

・連帯保証人が外国籍法人の代表者やそれに伴う連帯保証人が外国籍である場合、法人が外資系である場合、オーナーからの信用度が低くなり、保証会社への加入が必要となるケースがあります。また、連帯保証人を立てていても保証会社への加入を求められる場合もあります。これは前述したように法人が物件を契約する際には名義を法人名、連帯保証人を代表者とすることが一般的ですが、法律上の問題はないにせよオーナー側からすると実質同一であると捉えられ、連帯保証人と保証会社を組み合わせることで家賃滞納のリスクを少しでも減らそうとするのです。
また借主が家賃を滞納した場合に保証会社が立て替えて支払ってくれることに加え、物件の明け渡しにまで事態が進んだ場合にも訴訟費用を負担するのは保証会社となります。明け渡しが決まった後の原状回復費用も保証会社が支払いますので、オーナーの負担は大変小さくなるのです。このため、最近では保証会社への加入が賃貸事務所を借りるための必須項目となっている物件も少なくありません。借主にとっては保証会社へ保証料を支払わなくてはならないため、移転時の必要コストが上がりますが、保証会社に加入することによって借りられる物件が増えたり、連帯保証人を他に探さなくてはならない煩わしさから解放されるというメリットもあります。

以上のような点を踏まえ、賃貸事務所を新しく借りる際には保証会社への加入が必要か、それに付随するメリット・デメリットをよく把握した上で物件探しをすると良いでしょう。

賃貸事務所契約時にかかる費用と入居後に毎月かかる費用

賃貸事務所を契約する際には、様々な費用がかかります。また、実際に入居してから毎月発生する費用もあります。今回はこの2種類の費用に関して詳しくみていきましょう。
まずは、賃貸事務所の契約時にかかる費用からご案内していきます。

・敷金(保証金)
賃貸事務所を契約する際には物件のオーナーに敷金(保証金)を支払います。これは入居後に、借主の家賃の滞納、過失によって物件を損傷した場合等の担保の意味合いがあります。賃貸事務所を借りる際には、家賃の6~12ヶ月分の敷金(保証金)が必要になることが一般的です。この敷金(保証金)は退去時に一部または全額返還されます。

・礼金
賃貸事務所の契約時に物件のオーナーに支払う費用です。大規模な賃貸事務所では支払うことはあまり多くありませんが、小・中規模の賃貸事務所では家賃の1~2ヶ月分を礼金として支払う場合があります。敷金(保証金)とは違い、退去時に返還されることはありません。

・前家賃
入居した当月の家賃を契約時に物件のオーナーに支払います。入居日が契約日より後の場合でも契約時に支払いが必要となります。また、当月内の入居期間が少ない場合には翌月分の家賃もまとめて前家賃として支払うこともあります。

・前共益費
共益費とは賃貸人が使用する物件の設備の運営を維持するために支払う費用のことです。入居した当月の共益費も契約時に必要であり、これを前共益費と呼びます。入居日によっては前家賃と同様、翌月分の共益費も契約の際に支払いが必要となる場合があります。

・仲介手数料
賃貸借契約が締結された際に仲介をした不動産会社に対して支払う費用です。家賃の1ヶ月分を仲介手数料として支払うことが一般的です。

・保証委託料
物件を賃貸する際には保証人が必要ですが、適当な人が見つからない場合や不動産会社に勧められた場合には賃貸保証会社を活用する場合もあります。この場合には賃貸保証会社への保証委託料の支払いが必要です。

・火災保険料
入居した物件で火災が発生した時のために損害賠償火災保険に加入します。加入する保険の種類によって火災保険料の額は異なります。

賃貸事務所を新規で借りる場合には、契約時だけでなく入居後にももちろん費用が発生します。それでは次に入居後に毎月支払う費用についてみていきたいと思います。

・賃料
毎月支払う家賃のことです。移転前に入居していた賃貸事務所と移転後の賃貸事務所に賃料を支払う時期がなるべく重ならないようにすることが大切です。

・共益費
前述の前共益費の箇所でもご説明した通り、賃貸人が利用する物件の設備の運営や維持に関わる費用です。物件の共用部の水道光熱費や小修繕費、清掃・衛生費、冷暖房空調費、保安管理費などに充てられます。

・水道光熱費
一般の住宅と同じように貸室内で使用した水道、電気、ガスの費用も毎月支払いが必要です。テナント毎に電気、水道、ガスの供給会社と契約を結ぶ場合と賃貸事務所のオーナーが一括で供給会社と契約する場合があります。後者の場合は水道光熱費を毎月オーナーに支払うことになります。

・室内清掃費
大規模な賃貸事務所の場合には室内清掃が必須の場合があります。その際の清掃費は借主負担となります。トイレが貸室外の共用部にある場合には、清掃やトイレットペーパーの交換等は貸主側で行うのが一般的ですが、室内に設置されている場合には借主の負担で清掃やトイレットペーパーの交換も行う必要があります。

以上のように、オフィス移転や起業などで新たに賃貸事務所を賃貸する場合には、契約の際にかかる費用と入居後に毎月発生する費用があります。どのような種類の費用が発生するのかをよく把握しておき、できるだけコストを抑えられる物件を探したいですね。

オフィスを購入するというかたち

オフィス移転を検討する際に、新しい事務所を購入するか賃貸するか迷われる方もいらっしゃるでしょう。特に会社の業績が伸びている時にはオフィスを購入した方がよいのではないかと考えられるのではないでしょうか。今回は、「オフィスを購入する」ということについてみていきたいと思います。

賃貸事務所に会社の拠点を構えている企業様も、業績が好調で今後も拡大が予測できる場合には、オフィスを購入して自社所有の物件に新たに拠点を置こうと考えられる場合もあるでしょう。賃貸事務所を借り続けても、毎月の家賃が発生しますし、資産としては何も残りません。さらに会社としての利益が出れば出る程、支払う税金も多額になるため、それなら購入時にコストがかかったとしても自社ビルを購入した方がよいのではないかと考えられる方も多いと思います。ただし、オフィスの購入はメリットばかりではないのも事実です。
それでは、オフィスを購入すること、そして賃貸することにそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのかを順番にみていきましょう。

【オフィスを購入するメリット】
・物件が会社の資産として残る
物件を購入しても、一括払いでない限り毎月の支払いがあるのは賃貸の場合と変わりません。しかし、購入した物件は会社の不動産資産として残ります。

・減価償却費を計上できる
物件を購入した場合、費用のうち、建物の減価償却分を経費として計上することになります(土地代は計上できません)。その他、固定資産税やビルの管理にかかる費用も経費として計上することができます。さらに、融資を受けて購入した場合には利息分も計上できます。

・物件を担保にできる
新規の事業等を始める際に、購入した物件を担保として金融機関から融資を受けることができるため、資金調達をしやすくなります。

・企業としての信頼感が増す
自前のオフィスを所有していると業績や財政面が安定していると評価され、企業としての信頼度がアップします。

・内装等を自由に変更できる
物件が会社の所有物であるため、壁紙やカーペット等の内装を好みで変更することが可能です。その他にも、電話の引き込み回線数やビルの利用時間等の面でも制約が少なくなります。

オフィスの購入にはメリットばかりがある訳ではありません。次にデメリットをみていきましょう。

【オフィスを購入するデメリット】
・初期コストがかかる
物件購入時の初期コストは賃貸よりも大きくなります。

・企業の拡大縮小への対応が取りにくい
一度物件を購入してしまうと、簡単には移転ができないため、業績の拡大、縮小への対応がしにくくなります。社員数が増加した場合にも身動きが取りづらいでしょう。

・管理費や固定資産税がかかる
賃貸では、ビルオーナーや管理会社が行っていたビル内部の点検・管理を自社で行わなくてはなりません。場合によってはビルの管理会社を外注する必要があります。また賃貸ではオーナーが支払っていた固定資産税も会社に支払いの義務が生じます。

それでは、次にオフィスを賃貸した場合のメリット、デメリットも参考までにご案内します。

【オフィスを賃貸するメリット】
・初期費用が軽減できる
物件購入に必要な頭金等の必要がないため、初期コストが賃貸の方が安く抑えることができます。

・移転等の変化に対し柔軟な対応が可能
業績が伸び、従業員が増大する場合には、オフィスの拡大も考えなくてはなりません。逆に縮小の可能性もあります。このような場合にはオフィスの移転を検討することになりますが、賃貸なら身動きが取りやすくなります。
オフィスを賃貸するデメリット

・資産がとして残らず、支払いがずっと続く
事業を継続している限り、賃料の支払いはずっと続きますが、あくまで賃貸のため会社の資産としては何も残りません。

・利用にオーナーの決めた制約がある
内装や電話回線の数、利用時間等にビルオーナーの決めた制約があり、それを守らなくてはなりません。内装を変更した場合には、移転時に原状回復義務があるため、出費が嵩む可能性があります。

・賃料値上げの可能性
契約更新時期など、賃料が値上げされる可能性があります。

以上のように、オフィスの購入そして賃貸にはそれぞれメリット、デメリットがあります。移転の際には、現在の会社の状況をよく把握して、購入するべきか、それとも賃貸の方がよいのか、最適な道を選ぶようにしましょう。不明な点は信頼できる不動産会社に相談することをおすすめします。

渋谷エリアは新築の大規模賃貸事務所が目白押し

現在、渋谷駅エリアで大規模な再開発が進行中です。この再開発は東京オリンピックが開催される2020年を目途に完了予定であり、その頃には渋谷の街が大きく変貌を遂げていることが予測されます。これ以前にも、渋谷には2000年竣工の渋谷マークシティ、2012年竣工の東急文化会館跡地に建設された渋谷ヒカリエ等、大規模賃貸事務所が増加してきていました。渋谷ヒカリエは、現在では渋谷エリアのランドマーク的存在となっています。
そして現在、新たに複数の大規模賃貸事務所の再開発プロジェクトが進められています。どのようなプロジェクトなのか順番にみていきましょう。
渋谷スクランブルスクエア現在進行中の渋谷の再開発の中で最大規模のプロジェクトです。地上47階、高さ約230mの超高層ビル(東棟)をメインとした巨大な複合施設が建設されます。東棟、中央棟、西棟の3棟から構成され、最も早い東棟の完成は2019年。国道246号線と明治通りの交差する付近に建設されています。西棟はJR渋谷駅を挟んで向かい側の国道246号線沿い、現在、渋谷駅西口バスターミナルがある場所に建設予定です。中央棟は、東棟と西棟の間のJR渋谷駅真上に建設されます。この中央棟は線路上をまたいで、将来ハチ公口まで伸びてくる予定です。現在のスクランブル交差点と近接することから、「渋谷スクランブルスクエア」の名称が付けられました。東棟には渋谷エリアで初となる有料展望台が設けられる予定です。

・渋谷ストリーム
渋谷川沿いの東急東横線跡地に2018年秋、地上35階建て、高さ約180mの超高層ビルが竣工します。オフィスのほか、商業施設やホテル、交流施設が入居する複合施設で、コンセプトを「クリエイティブワーカーの聖地」とし、4階にはコワーキングスペースが設けられます。渋谷ストリームが建設されているのは渋谷エリアで唯一川が地上に顔を出している空間。オフィスワーカーにとって水の流れを間近に感じられる都心のオアシス的存在となりそうです。

・道玄坂一丁目駅前地区
旧東急プラザ渋谷跡地及び隣接街区にオフィス、商業施設の入居する地上18階建て、高さ約120mの超高層ビルが建設されます。竣工予定は2019年秋で、1階には空港行のリムジンバスも発着するバスターミナルが併設されます。コンセプトは「小さな物語の集積」。これまで様々な流行やカルチャーの発信地であった渋谷の街が持つエネルギーを凝縮したような斬新な外観デザインに仕上げられる予定です。渋谷駅西口の新たな玄関として注目を集めることになるでしょう。

・渋谷駅桜丘口地区
東急不動産が手掛ける渋谷駅南西部、桜丘地区の再開発事業によるプロジェクトです。A棟、B棟から構成されるオフィス、商業施設、住宅、起業支援施設が入居する超高層ビルが2020年を目途に竣工予定となっています。この「住む」「働く」「遊ぶ」を兼ね備えた複合施設の建設により、国際都市としての渋谷をさらに強化することが目的とされています。

・宇田川町15地区(パルコ建て替え)
2019年10月に新生渋谷パルコが誕生します。商業施設のほか、オフィス、劇場、展示場等が入居予定で、次世代のグローバルショッピングセンターとして生まれ変わります。この新しいパルコのビルは地上19階建て、高さ約100mになる予定です。

・南平台プロジェクト
東急不動産が入居していた南平台の新南平台東急ビル等4棟をまとめて建て替えるプロジェクトです。大規模な賃貸事務所として2019年3月に完成予定で、低層部にはインキュベートオフィス等の産業施設が入居する予定となっています。建物は地上21階建て、高さ約107mで、3階から20階の各テナントのオフィスにテラスを設けるほか、21階には庭園やラウンジを設置し、オフィスワーカーが快適に働くことのできるオフィスが実現されます。

・渋谷区宇田川町計画(Abema Towers)
現在、10箇所に分散されているIT企業大手の株式会社サイバーエージェントが2019年2月に2箇所に集約されます。その1箇所の移転先が渋谷区宇田川町に建設される地上21階建て、高さ約111mのAbema Towersです。もう1箇所は前述の渋谷スクランブルスクエア。Abema Towersには本社機能、メディア事業、ゲーム事業が移転予定となっています。

・渋谷区道玄坂二丁目開発計画
地上28階建て、高さ約130mの超高層ビルが2022年4月に道玄坂2丁目に竣工予定です。再開発事業を手掛けているのはドンキホーテホールディングスで、店舗、オフィス、ホテル等が入居予定となっています。

上記の再開発は賃貸事務所の建設に関連した事業ですが、この他にも渋谷区役所建て替えプロジェクトや宮下公園の整備事業等が渋谷エリアにて進行しています。
かつては多くの若者が行き交い、ファッションや音楽、文化など流行の発信地だった渋谷は、あまり大人の街というイメージはありませんでした。しかし、近年の再開発により複合施設や賃貸事務所が多数建設されたことにより、街の様相も大きく変化しています。特に、クリエイティブ・コンテンツ産業にとって、渋谷の再開発による進化は大きな影響をもたらすでしょう。若者だけでなくオフィスワーカーにとって注目の街となっていく渋谷から今後も目が離せません。

目覚ましい成長を遂げているIT企業は渋谷を好む

渋谷の街並み

渋谷の街並み

1990年代後半に日本でインターネットが普及して以降、IT関連企業の成長が止まりません。この1990年代後半から2000年代初頭にかけてはITバブル時代として知られ、渋谷にITのベンチャー企業が集結しました。この時代の渋谷は「ビットバレー」と呼ばれたことでも有名です。「ビットバレー」の名称は、アメリカ、カリフォルニア州のサンフランシスコに位置するIT企業やベンチャー企業が集結するエリア「シリコンバレー」に由来しています。IT関連企業が集中する渋谷の「渋(bitter)」と「谷(valley)」を組み合わせて、「Bit Valley」と呼ばれるようになりました。
しかし、その頃の渋谷の賃貸事務所の多くは小規模なオフィスビルでした。事業が拡大するにつれて、オフィスが手狭になってきた企業も多く、2003年の六本木ヒルズの開業により、渋谷で成功を収めたIT企業が続けてヒルズへと移転をしていくことになります。そのため、渋谷がIT企業の集まる街であるというイメージは次第に薄くなっていきました。しかし、現在でもミクシィやサイバーエージェント、GMOインターネット、LINE、DeNAなどの多くの一流IT企業が渋谷に拠点を構えています。そして、その渋谷に、現在再びIT企業が集結し始めているのです。2017年、Googleの日本法人が2019年に六本木ヒルズから移転することを発表しました。移転先は2018年に竣工予定の渋谷ストリームです。渋谷ストリームは、渋谷川沿いの東横線跡地に誕生予定の大規模複合施設です。渋谷エリアの中で唯一、川が地上を流れる空間に立地予定で、まさに都会のオアシス的存在となりそうです。
そもそも、1990年代後半に渋谷にIT企業やベンチャー企業が集結した理由には、様々な理由があります。当時の渋谷は常に多くの若者が行き交うファッションや音楽、カルチャーなどの流行の発信地でした。さらに、渋谷には以前から映像・広告・出版等のクリエイティブな事業を展開する企業が集結していました。スーツに身を包んだオフィスワーカーが行き交うオフィス街、丸の内・大手町とは異なり、この渋谷の自由な雰囲気は新しい事業を興そうとしているIT企業家やベンチャー起業家の目に魅力的に映ったのでしょう。さらに、渋谷は副都心としても知られ、渋谷駅は山手線をはじめとしたJR各線、京王井の頭線、東急東横線、東京メトロ銀座線、半蔵門線、副都心線などの多くの路線が乗り入れるビッグターミナルです。東京都心においても、特に優れて交通の便が良いことも賃貸事務所を構える場所としては大きなメリットになるのです。
以上のような要素が相まって、渋谷にIT企業やベンチャー企業が集結していったことが考えられます。あるIT企業が渋谷に拠点を置くことが、また新たな企業を呼び込むことにも繋がり、「ビットバレー」と呼ばれるムーブメントを巻き起こしていったのでしょう。
前述したGoogleの日本法人は、もともと東急セルリアンタワーに拠点を置いていました。事業の拡大により手狭になったことで、六本木ヒルズに移転しましたが、2019年に再び渋谷に戻ってくることを明らかにしています。東急セルリアンタワーには現在GMOインターネットが入居しています。2012年には渋谷ヒカリエにDeNAが入居。さらに、2019年にはミクシィが現在建設中の渋谷スクランブルスクエアにオフィスの集約を予定しています。
また、今後、渋谷では大規模な再開発事業が予定されています。Googleが渋谷に再度移転することに決めた背景にも、渋谷の街が今後整備されると共に、大規模賃貸事務所が増加していくことが関係していると言われています。2027年までに渋谷エリアで予定されている再開発事業は10件以上に及び、今後もGoogleのように他の場所から渋谷に移転するIT企業が増えていくことが予想されます。
さらに、渋谷では近年、コワーキングスペースの増加が顕著です。IT系のノマドワーカーもこのコワーキングスペースを多数利用しており、その場で出会ったノマドワーカー同士が連携して新しいビジネスを生み出す機会も少なくありません。これらのコワーキングスペースの増加に伴って、クラウドソーシングサービスの大手ランサーズやクラウドワークスも渋谷に拠点を移転しました。
新しいことへの挑戦に適した自由な風土を持つ渋谷。これからもクリエイティブ事業を展開する企業やIT関連企業がさらに集結してくるのではないでしょうか。

育児を伴うビジネスマンの働き方

近年、共働き夫婦世帯の増加が顕著にみられます。そのような状況の中、子供を預けて働く保育所の利用者も年々増加しており、入所できなかった待機児童の問題は社会問題にもなっています。今回は、育児を伴う働き方について考えていきたいと思います。
厚生労働省の調べによると、共働き家庭は、現在1000万世帯を超え、さらに増加し続けています。それに伴い、子供を預けて働くことを希望する家庭も増えていますが、保育所自体が不足していたり、利用定員を超えてしまうために入所できず、待機している状態の待機児童も増加しています。また、保育所だけでなく、小学校入学後の子供の預け先である学童施設も同じ状況にあり、待機児童が発生しています。この待機児童問題は社会問題にもなっており、インターネット上に書き込まれた「保育園落ちた日本しね」のワードが2016年のユーキャン流行語大賞に選ばれたことも有名です。
待機児童は、特に人口が集中している都市部に多くみられます。国や地方自治体も待機児童対策に力を入れていますが、保育所の増設が間に合わず、待機児童が増え続けているのが現状です。保育所の増設が間に合わない原因のひとつには、住民の保育所建設の反対の声も関係しています。日中の大半を家の中で過ごす高齢者などの中には、子供の声を騒音と感じる人もいます。そのため、近所に保育所が新設されることで、自分達の静かな生活が乱されると考え、保育所の新設に反対の声を上げ、自治体が諦めるというケースも少なくありません。
また、待機児童として公にカウントされない「隠れ待機児童」の存在もあります。希望している認可保育所には入所できず、認可外の保育所に入所している児童や保育所に入れないために、保護者が求職を諦めてしまったり、育児休暇を延長する場合などがこれにあたります。
そのような状況の中、内閣府による企業主導型保育所のサービスが2016年度から開始しました。企業主導型保育所とは、その名称どおり企業主導型の保育事業で、多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大を実施し、仕事と子育ての両立に役立てることを目的としています。内閣府は、企業主導型保育所の主な特徴を「働き方に応じた多様で柔軟な保育サービスが提供できる」「複数の企業が共同で設置できる」「他企業との共同利用や地域住民の子供の受け入れができる」「運営費・設備費について認可施設並みの助成が受けられる」と謳っています。
企業主導型保育所は、企業が設置する保育所ということで、事業所内保育所と同じように思われる方もいるようですが、両者は異なるサービスです。どちらも企業が従業員の仕事と子育ての両立のために設置している点では同じですが、事業所内保育所が市区町村の認可事業なのに対し、企業主導型保育所は認可外の保育所です。認可事業である事業所内保育所は、利用するために自治体による保育の必要性の認定が必要となります。そのため、短時間勤務や週数回のパート勤務の場合には利用できない可能性が高くなります。一方の企業主導型保育所は、企業と利用者が直接契約を結ぶため、自治体による保育認定が受けられなくても利用が可能なのです。企業主導型保育所は認可外ということで、利用料金が高くなるのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、認可外ではあるものの、認可施設並みの助成が受けられるため、利用料金も認可保育所と同水準に設定されています。また、通勤や子供の送り迎えに便利な場所に設置されていることが多いのもポイントです。多様な働き方に柔軟に対応可能で、かつ利用料金も認可保育所と変わらない企業主導型保育所は、利用者にとって多くのメリットがあります。さらに企業主導型保育所は、設備や保育環境に関しても一定基準以上であることが求められているため、子供を安心して預けられるのも魅力のひとつです。
また、企業主導型保育所は、利用者だけでなく企業側にもメリットがあります。多様な働き方のニーズに合わせて保育所の利用ができるため、従業員が安心して働くことができ、離職率の低下にも繋がるのです。昨今は少子高齢化に伴い、人材不足に悩む企業も多くみられます。そのような状況の中、企業主導型保育所の設置は福利厚生の面でも従業員の満足度が上がると言えるでしょう。他の企業との共同運営が可能なため、経営面でのリスクも分散できます。また、地域住民の子供を受け入れることで、その地域への貢献にも繋がるのです。
このように、利用者、企業双方にメリットの多い企業主導型保育所は、今後さらにサービスを拡大していくのではないでしょうか。