不動産業を営むために欠かせない宅地建物取引士の資格と業務内容

宅地建物取引士画像

■不動産業を営むうえで欠かせない資格

不動産売買や不動産賃貸業など宅地建物取引業を営む場合には、宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けなければなりません。
免許を授かるにあたっては、営業する事務所をはじめ、国土交通省令で定める場所ごとに事務所の規模や業務内容に応じて、国土交通省令で定める人数の専任の宅地建物取引士を置くことが義務付けられています。
たとえば、事務所の規模によっては最低でも1人が必要ですが、オフィスビルの賃貸や売買など大規模な不動産事業を営む事務所では、ほぼすべてのスタッフが宅地建物取引士の資格を取得しています。
新卒で入社、あるいは中途採用で転職をしてまだ資格を持っていない場合、まずは自社で研修を受けるか、専門学校に通わせてもらうなどして資格を取得するところからスタートするのが一般的です。
試験日は毎年1回、10月の第三日曜日に開催されるのが通例です。
過去10年ほどの合格率は15%~17%であり、決して簡単な試験ではありません。
ですが、不動産会社に勤める以上、資格を取得しないと同期と差がついたり、業務の中でもできないものが増えたりしてしまいます。
宅地建物取引士の資格を取得すれば、自分に自信がつくのはもちろん、物件を探している方へのアドバイスなどもしやすくなり、オフィスビルの売買契約や賃貸契約の契約当事者に立ち合い、売主や貸主のオーナーに代わって重要事項の説明を行うなど、責任ある重要な任務も遂行できるようになります。

■宅地建物取引士になるまで

宅地建物取引士とは宅建業法で定める宅地建物取引士資格試験に合格し、試験を実施した都道府県知事の資格登録を受け、都道府県知事の発行する宅地建物取引士証の交付を受けた者を指します。
単に試験に合格しただけでは足りず、都道府県知事に資格登録の申請を行い、受理されて資格証明書の発行を受けなくてはなりません。
試験に合格しても、実務経験が2年未満の場合、実務講習というのを受けないと登録が認められません。
不動産会社に勤務しているなど宅建業に従事している場合は、試験を受ける前に登録講習を受けることで、試験の一部免除が受けられます。
従事者が試験に合格した場合、既に2年以上の実務経験があれば、すぐに登録申請が出せます。
一方、入社して間もないなど実務経験が2年に満たない場合は、やはり実務講習を受けて都道府県知事への登録申請を行わなくてはなりません。
なお、登録をして資格証が発行されれば、宅地建物取引士の資格自体は除名事項などに該当しない限り、一生有効です。
ただし、都道府県知事が発行する宅地建物取引士証の有効期間は5年しかありません。
継続的に宅地建物取引士として宅建業務を行っていくためには、5年ごとの更新が必要です。
そのためには都道府県で実施される法定講習を5年ごとに受け、再度、登録申請をして新しい宅地建物取引士証を受けなくてはなりません。

■宅地建物取引士の行う業務

オフィスビルを探す際に、希望条件をヒアリングして相談に乗ってくれたり、物件を探してくれたり、物件を案内してくれたりするお仕事は、実は宅地建物取引士の資格を取得していなくてもできます。
小さな不動産会社や賃貸住宅の案内を行うスタッフの中には、学生アルバイトや資格のないスタッフが含まれているケースは少なくありません。
一方、オフィスビルの投資や売買、賃貸など高額な金額が動くケースやクライアントからの要求が高度になる取引ほど、宅地建物取引士の資格を取得したスタッフが対応するケースが増えます。
大手の不動産会社や規模の大きな事務所であれば、オフィスビルを扱えるのは宅地建物取引士の資格を取得して、都道府県知事からの宅地建物取引士証を受けたものに限定されるケースがほとんどです。
そのため、相談もしやすく、プロとしての適切なアドバイスが受けられるほか、条件交渉や契約手続きも安心して任せることができます。
宅地建物取引士でないとできない業務として、宅建業法第35条に定める重要事項の説明と重要事項説明書への記名押印および同第37条に定める契約書面などへの記名押印があります。
オフィスビルの売買や賃貸契約を結ぶ際に、必ず行われる重要なルールですが、これは宅地建物取引士の資格がないとできません。
宅地建物取引士の試験に合格するための勉強や各種の講習などを通じて、不動産の売買や賃貸時に取り交わす契約書に記載されているトラブルが起こった場合の処理方法などのノウハウも学んでいます。
また、トラブルを未然に防ぐためのコンプライアンスに基づく対応や不動産取引の慣例から、売買価格の決め方や賃貸料の決め方、手数料の計算法なども習得しています。
また、不動産購入の際にかかる税金制度のことやオフィスビル賃貸時の仕分け法など税務や会計に関する知識にも詳しく、一般的な範囲でアドバイスやコンサルティングも可能です。
土地・建物の安全性や耐久性といった不動産の物件に関する知識も、専門書や講習、実務経験を通じて習得していきます。