近年、東京都心部ではオフィスビルの建設ラッシュが進んでいます。2017年には「GINZA SIX」をはじめとした20棟以上のオフィスビルが都心で竣工しました。この傾向は東京オリンピックの開催される2020年まで続くと予想されており、2018年もさらに多数のオフィスビルが竣工予定です。
代表的なところでは、三井不動産が開発を手掛けている複合施設「東京ミッドタウン日比谷」が竣工します。高層部のオフィスフロアのほか、低層部の商業フロアにはレストラン街やショッピングモール、映画館が入居予定となっています。「東京ミッドタウン日比谷」の高層階からは、皇居や日比谷公園、東京スカイツリーを一望できます。また、地下鉄日比谷駅と直結しており、交通アクセスも抜群です。このように、「東京ミッドタウン日比谷」は、機能性の高いオフィスビルとしてはもちろん、都心において自然を感じられる文化施設としても注目を集めること間違いないでしょう。他にも、千代田区では「住友不動産ふくおか半蔵門ビル」や「丸の内二重橋ビル」が2018年に竣工予定です。
その他、中央区では「太陽生命日本橋ビル」「日本橋高島屋三井ビルディング」、港区では「田町ステーションタワーN・田町ステーションタワーS」「住友不動産御成門タワー」「ニッセイ浜松町クレアタワー」が開業予定となっています。さらに、渋谷区で「渋谷ストリーム」、台東区で「秋葉原アイマーク」が竣工を迎えるほか、品川区でも大崎エリアの再開発による大規模複合ビルが2018年中に竣工します。2018年だけで、都心部では実に32棟のオフィスビルが竣工を予定しており、前述の大規模賃貸事務所以外にも、基準階面積20~50坪の小・中規模のオフィスビルも竣工予定となっています。
さらに、2018年から2020年にかけては、千代田区、中央区、港区の都心3区だけでも45棟の大規模賃貸事務所の竣工が予定されています。これに伴い、オフィス貸付面積も大幅な増加が見込まれています。このような大規模オフィスビルが続々と建設される背景には、安倍内閣のアベノミクスによる経済効果や東日本大震災以降、企業のBCP強化を目的とした機能性の高いオフィスへの移転が増加していることがあると考えられています。では、近年のようなオフィスビル建設ラッシュともいえる状況の中、オフィス賃料や空室率等のオフィス市況はどうなっているのでしょうか。2017年のオフィス賃料は上昇傾向にありました。それに反比例するかのように空室率は減少しています。これは、賃貸事務所のニーズが高まっていることを意味しています。具体的な例を挙げると、2017年に竣工した「GINZA SIX」「赤坂インターシティAIR」も稼働率は大変好調で、ほぼ満室に近い状態となっています。このように、賃貸事務所のニーズが高まっているのには、様々な要因があります。具体的には、オフィスビルの建設ラッシュと同様に企業のBCP強化をはじめ、ビルの老朽化による新しい賃貸事務所への移転、地域の再開発に伴う移転などが挙げられます。
では、2018年以降、オフィス市況に変化はみられるのでしょうか。2018年からのオフィスビル建設ラッシュは、千代田区、中央区、港区の都心3区に加え、渋谷区、品川区、台東区に集中しています。そのため、それ以外のエリアや企業が移転する前に拠点としていたエリアでは、テナントの獲得が厳しくなり、空室が発生する可能性も考えられます。また、2018年からのオフィスビル建設ラッシュにより、供給過剰となり、空室の発生や賃料の下落が生じるとの見方もあります。それに伴い、現在の貸し手優勢の状況から借り手優勢となっていくのではないかとも予測されています。
2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客も増え、都心部はさらなる賑わいを見せることが予想されます。また、2018年に竣工する物件を含めて、近年建設されているオフィスビルは、オフィスゾーンだけでなく、商業施設やホテル、さらには住居を併せ持つ複合施設も多くなっています。一時的な供給過剰により、空室が生まれることはあるかもしれませんが、東京都心がビジネス、そして商業の中心地として、今後さらに活性化していくことを期待したいものです。