デザイン性の高まるオフィスビル

近年、東京都心でオフィスビルの竣工が相次いでいます。それに応じて、オフィス建築も進化を遂げており、デザイン性が高くおしゃれな外観や内装の賃貸事務所が増えています。今回は、オフィスビルの高まるデザイン性についてみていきましょう。
毎日、出勤して長時間を過ごすオフィス。できることなら綺麗でおしゃれな方が気持ちよく働けるのではないでしょうか。外観や内装のデザイン性が高いオフィスは機能性も充実している場合が多く、作業効率もアップします。また、綺麗なオフィスで働くことでステイタスの高さを感じることもできるため、仕事へのモチベーションもアップするでしょう。
また、オフィスは企業の顔でもあります。おしゃれでデザイン性の高いオフィスは、その場所で働く従業員だけでなく、取引先等の来訪者にも良いイメージを与えるため、会社全体の印象にも影響するのです。また、ビルの外観はもちろん、エントランスやエレベーターホール、オフィススペースの環境も会社のイメージに関与すると言えるでしょう。さらに、デザイン性が高く目を引くオフィスビルは、そのエリアのランドマーク的役割を果たすため、来訪者に道案内をしやすいメリットもあります。
また、前述したように、デザイン性の高いオフィスビルは同時に機能性も優れています。高度な機能を有した空調・照明システムの採用をはじめ、フリーアクセスフロアやグリッドシステム天井を導入し、働きやすいオフィス環境が整備されているほか、セキュリティ対策やアメニティも充実しています。さらに、そのようなオフィスビルには環境問題への取り組みを推進するCSR活動に力を入れている企業も少なくありません。おしゃれなオフィスビルは、デザイン性が高いだけでなく、あらゆる機能性に優れ、社会的責任を果たしている場合も多いのです。
それでは、ここで、グッドデザイン賞をはじめとした賞を受賞しているオフィスをいくつかご紹介しましょう。

・東京スクエアガーデン
2014年グッドデザイン賞授賞。銀座・日本橋を結ぶ京橋エリアに建設された緑豊かな複合施設です。上層階に天井から繋がっている約1.8mの庇を設置し、日光の遮蔽効果を持たせています。低層階には植栽を施して緑とゆとりのある空間を作り出すことで、周辺地域の活性化及びクールスポットの提供を図っています。

東京スクエアガーデン 外観

東京スクエアガーデン 外観

・資生堂銀座ビル
2014年グッドデザイン賞授賞。銀座に佇む資生堂の自社ビルです。「未来唐草」と名付けられたシェードで覆われた外観は道行く人の目を引きます。この流線のシェードは日射の制御や近隣のビルからの視線制御にも役立っています。

・ラゾーナ川崎東芝ビル
2014年グッドデザイン賞授賞。川崎市幸区の東芝堀川町工場跡地の再開発事業として建設されたオフィスビルで、キューブ型のフォルムが印象的です。周囲を囲むバルコニーとルーフは、災害時の避難経路にもなるほか、熱負荷低減の役割も果たしています。

・アーバンネット神田ビル
2013年グッドデザイン賞授賞。千代田区内神田に立地する賃貸事務所で、店舗とカンファレンスも併設されています。低層部をムラと多種仕上げのヤキモノ及び昼夜で異なる表情を見せるルーバーで構成した建物の正面が印象的です。耐震性能には制振構造を採用し、BCPの強化にも力を入れています。

・オークラヤ麹町ビル
2013年グッドデザイン賞授賞。格子構造及びガラス・石材・アルミによる格子ファザードがスタイリッシュな外観の小規模オフィスビルです。高窓、腰窓、地窓を設置することで、開放性と遮蔽性をコントロールし、様々な働き方に合わせたオフィス環境が作り出されています。

・日本ヒューレット・パッカード株式会社本社ビル
2012年グッドデザイン賞授賞。近隣の公園、河川など自然を活用して、エコな空間を実現したオフィスビルです。外装に庇を全面的に採用することで、日射制御、バルコニー、空調機置場等に活用しています。建物内部に大小3つの吹き抜けを設置しており、風と光を感じることができます。

スタイリッシュでデザイン性の高いオフィスビルは、その場所のランドマーク的存在ともなり得るため、道行く人々に覚えてもらいやすくなります。従業員はそのおしゃれなオフィスに出勤することにステイタスを感じるでしょう。オフィスの内装も綺麗で、環境も整備されていれば、仕事へのモチベーションが上がるだけでなく、作業効率もアップします。
さらに、このようなオフィスビルは、機能性が高く環境にも配慮している場合も多いのです。CSR活動を強化することは、企業価値を高めることにも繋がります。デザイン性の高いオフィスビルは、単におしゃれな賃貸事務所というだけでなく、様々な付加価値を持っているのです。
今後、2020年を目途に東京都心では、大規模なオフィスビルの竣工が続きます。最新のオフィス建築を駆使したデザイン性が高く、機能性の充実したオフィスビルが誕生することで、日本の企業の価値がさらにアップし、経済効果が生まれることを期待したいものです。

東日本大震災以降のオフィスビル(BCPや耐震性の強化)

近年、企業がオフィス移転をする際に、オフィスビルのBCPを重視するようになってきました。これは、2011年に発生した東日本大震災による影響があるものと考えられます。BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、事業継続計画のことをいい、災害、事故等の緊急事態にも被害を最小限にとどめ、できるだけ重要業務と中断させないようにし、中断したとしても、速やかに復旧・再開できるよう事前に策定しておく行動計画です。東日本大震災時には、建物が倒壊しなかった場合でも、通信手段がストップし、オフィス機能の回復に時間を要した企業も多くみられました。そこで、今回は近年、企業が重要視している賃貸事務所のBCP対策について考えていきたいと思います。
それでは、まずBCPのひとつの要素である耐震性についてみていきましょう。1981年6月1日、建築基準法が改正されました。1981年6月1日以降に建築確認されている建物の基準は新耐震基準、それ以前の基準は旧耐震基準となります。新耐震基準と旧耐震基準との違いをご説明しておくと、新耐震基準は震度6強から7程度の地震でも倒壊しない構造基準であり、旧耐震基準は震度5強程度の地震で建物が倒壊しない基準として設定されています。1995年に阪神淡路大震災、2004年に新潟県中越地震が発生し、2006年には物件の重要事項説明書にその建物が新耐震基準を満たしているかどうかの記載が義務付けられました。この頃から企業がオフィスを選定する際、徐々に耐震性を意識するようになってきたと考えられます。さらに、2011年に発生した東日本大震災が拍車をかけ、企業がビルの耐震性を重視する傾向が急激に強まり、旧耐震基準から新耐震基準の賃貸事務所への移転も増加しました。また、建物には「耐震」「制震」「免震」という3種類の構造の違いがあり、地震が発生した際に感じる揺れは耐震>制震>免震の順に大きくなります。そのため、新耐震基準の賃貸事務所に入居していたテナントでも、さらに揺れを低減させる制震構造や免震構造のオフィスビルへの移転も目立っています。
ここで、「耐震」「制震」「免震」の違いについて簡単に説明しておきましょう。「耐震」は、柱・梁・壁等を補強して地震による揺れに耐える建物の構造のことです。「制震」は壁や柱にダンパー等の制振軽減装置を設置して建物の揺れを抑える構造です。「免震」は建物と地面の間にゴム等の免震層を設置し、建物と地面を分離させることにより、建物に揺れが伝わりにくくする構造のことをいいます。近年、竣工の賃貸事務所においては、制震構造や免震構造を備えているハイスペック物件も増えてきています。

地震対策の3つの構造

地震対策の3つの構造

東日本大震災以降、BCPを策定する企業が急速に増加しました。その内容には通信の確保、従業員の帰宅困難者への対応のほか、入居ビル選定基準が盛り込まれている企業が多くなっています。入居ビル選定基準には、非常用発電機の有無に加え、地理特性を定める場合が増えています。非常用発電機を設置してあれば、本線、予備電源線のどちらからも電力が供給されなくなった場合にも、電力供給が継続されます。例えば、制震構造や免震構造など耐震性能に優れたオフィスビルに拠点を構え、大地震の際にビルの倒壊や事務機器等の破損を免れたとしても、電力の供給がストップしてしまえば事業の継続は不可能です。そのため、東日本大震災以降、この非常用発電機の設置を急ぐ企業が増えているのです。さらに地理特性については、オフィスの移転場所を選定する際にハザードマップを活用する企業が急増しています。ハザードマップとは被害予測地図のことで、地震などの自然災害による被害予測範囲を地図化したもののことをいいます。オフィスの立地を考える際にハザードマップを活用する企業が増加した背景には、東日本大震災発生時に新浦安や新木場などで液状化現象が発生したことがあります。できるだけ埋立地などは避け、リスクの少ない立地に拠点を置くことも、オフィス移転における最重要事項となってきていると言えるでしょう。
このように、東日本大震災以降、企業が重視するオフィス移転の条件としてBCPは外せない項目となってきました。ビルオーナーも、ビルの耐震設備、非常用発電機の有無や容量等をPRするようになっています。ただし、非常用発電機の設置や制振構造、免震構造の賃貸事務所への移転には高額な費用がかかることも事実です。近年、東京都心では大規模ビルが次々に竣工を迎えており、ハイスペックな機能を備えたオフィスビルも増えています。新しい賃貸事務所を選定する際には、BCP以外にも立地環境や賃貸料等、様々な条件を検討しなくてはなりません。今後、企業がオフィス移転をする際には、それらの条件の中から自社が重視するべき項目を、さらに厳しく見極めていく必要があると言えるでしょう。

2018年オフィスビルの建設ラッシュ

近年、東京都心部ではオフィスビルの建設ラッシュが進んでいます。2017年には「GINZA SIX」をはじめとした20棟以上のオフィスビルが都心で竣工しました。この傾向は東京オリンピックの開催される2020年まで続くと予想されており、2018年もさらに多数のオフィスビルが竣工予定です。
代表的なところでは、三井不動産が開発を手掛けている複合施設「東京ミッドタウン日比谷」が竣工します。高層部のオフィスフロアのほか、低層部の商業フロアにはレストラン街やショッピングモール、映画館が入居予定となっています。「東京ミッドタウン日比谷」の高層階からは、皇居や日比谷公園、東京スカイツリーを一望できます。また、地下鉄日比谷駅と直結しており、交通アクセスも抜群です。このように、「東京ミッドタウン日比谷」は、機能性の高いオフィスビルとしてはもちろん、都心において自然を感じられる文化施設としても注目を集めること間違いないでしょう。他にも、千代田区では「住友不動産ふくおか半蔵門ビル」や「丸の内二重橋ビル」が2018年に竣工予定です。
その他、中央区では「太陽生命日本橋ビル」「日本橋高島屋三井ビルディング」、港区では「田町ステーションタワーN・田町ステーションタワーS」「住友不動産御成門タワー」「ニッセイ浜松町クレアタワー」が開業予定となっています。さらに、渋谷区で「渋谷ストリーム」、台東区で「秋葉原アイマーク」が竣工を迎えるほか、品川区でも大崎エリアの再開発による大規模複合ビルが2018年中に竣工します。2018年だけで、都心部では実に32棟のオフィスビルが竣工を予定しており、前述の大規模賃貸事務所以外にも、基準階面積20~50坪の小・中規模のオフィスビルも竣工予定となっています。
さらに、2018年から2020年にかけては、千代田区、中央区、港区の都心3区だけでも45棟の大規模賃貸事務所の竣工が予定されています。これに伴い、オフィス貸付面積も大幅な増加が見込まれています。このような大規模オフィスビルが続々と建設される背景には、安倍内閣のアベノミクスによる経済効果や東日本大震災以降、企業のBCP強化を目的とした機能性の高いオフィスへの移転が増加していることがあると考えられています。では、近年のようなオフィスビル建設ラッシュともいえる状況の中、オフィス賃料や空室率等のオフィス市況はどうなっているのでしょうか。2017年のオフィス賃料は上昇傾向にありました。それに反比例するかのように空室率は減少しています。これは、賃貸事務所のニーズが高まっていることを意味しています。具体的な例を挙げると、2017年に竣工した「GINZA SIX」「赤坂インターシティAIR」も稼働率は大変好調で、ほぼ満室に近い状態となっています。このように、賃貸事務所のニーズが高まっているのには、様々な要因があります。具体的には、オフィスビルの建設ラッシュと同様に企業のBCP強化をはじめ、ビルの老朽化による新しい賃貸事務所への移転、地域の再開発に伴う移転などが挙げられます。

オフィスビル イメージ画像

オフィスビル イメージ画像

では、2018年以降、オフィス市況に変化はみられるのでしょうか。2018年からのオフィスビル建設ラッシュは、千代田区、中央区、港区の都心3区に加え、渋谷区、品川区、台東区に集中しています。そのため、それ以外のエリアや企業が移転する前に拠点としていたエリアでは、テナントの獲得が厳しくなり、空室が発生する可能性も考えられます。また、2018年からのオフィスビル建設ラッシュにより、供給過剰となり、空室の発生や賃料の下落が生じるとの見方もあります。それに伴い、現在の貸し手優勢の状況から借り手優勢となっていくのではないかとも予測されています。
2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客も増え、都心部はさらなる賑わいを見せることが予想されます。また、2018年に竣工する物件を含めて、近年建設されているオフィスビルは、オフィスゾーンだけでなく、商業施設やホテル、さらには住居を併せ持つ複合施設も多くなっています。一時的な供給過剰により、空室が生まれることはあるかもしれませんが、東京都心がビジネス、そして商業の中心地として、今後さらに活性化していくことを期待したいものです。

トランクルームの新しいかたち

近年、トランクルームサービスの需要が増加しています。トランクルームとは貸倉庫のことで、荷物を保管しておく場所のことです。企業の場合には日常使用しない書類やOA機器等を収納することが多くなっています。個人の場合には、普段使わないスキー・キャンプ用品等のレジャー用品や衣類を預けたり、出張時や家の建て替え時に荷物を収納しておくこともあるでしょう。以前は、トランクルームといえば、企業以外では富裕層の利用が目立っていましたが、最近では一般の人にもトランクルームが普及してきました。これには、2011年の東日本大震災の影響があると考えられています。普段使わない家財道具等をトランクルームに預けておくことで、万が一自宅が倒壊してもリスクの分散が図れるという目的があるのです。トランクルームは、運営形態や収納の仕方でいくつかに分類されます。それでは、まず運営形態による分類からみていきましょう。

・倉庫業法に基づいた国土交通省が定める「標準トランクルームサービス約款」が採用されている営業倉庫型トランクルームです。寄託契約によって物品を預け、荷物の出し入れは倉庫業者が行うか、利用者が行う場合には倉庫業者が立ち会うことになっています。

・不動産業者が収納スペースを提供するサービスとしてのトランクルームです。倉庫業法によるものではなく、不動産賃貸借契約によるサービスであるため、不動産業者は預かった荷物に対する保管責任を負いません。荷物の出し入れは一般的に利用者本人が24時間いつでも自由に行うことができます。
では、次に収納方法によるトランクルームの分類についてみていきたいと思います。

・屋内型:ビルやマンションの一室を様々な大きさのスペースに分割し、トランクルームとして提供します。都心に多くあるタイプのトランクルームです。料金は屋外型に比べて高く、管理費がかかる場合もあります。管理人が常駐しているビルやマンションもあるため、セキュリティがしっかりしている点もメリットです。スペースがあまり広くないため、大型の荷物の保管には適していません。

屋内型トランクルーム イメージ画像

屋内型トランクルーム イメージ画像

・屋外コンテナ型:空き地等にコンテナを設置して、中に荷物を収納します。郊外に多くあるタイプのトランクルームで、目の前まで車で荷物を運ぶことができる点が便利です。費用は屋内型に比べて割安で、スペースが広いため大型の荷物も保管できます。半面、屋外のため、湿度管理等がされず、書類や書籍、毛皮等、デリケートな物品の保管には適さない面もあります。雨風の強い日に荷物の保管や出し入れを行うと物品が傷んでしまう可能性もあります。

屋外型トランクルーム イメージ画像

屋外型トランクルーム イメージ画像

また、新しいトランクルームサービスとして、近年注目を集めているのが宅配型のトランクルームです。宅配型トランクルームとは、利用者本人ではなく、運送業者や引っ越し業者のスタッフが代わりに荷物をトランクルームまで運び、保管や出し入れを行ってくれるサービスです。通常のトランクルームの場合には、車がないと荷物を預けたり、出し入れをしたりすることが困難ですが、この宅配型トランクルームサービスは車を所有していない人にも適しています。また、サービスによってはWebから荷物の保管、出し入れを申し込むことができるほか、段ボール1箱分のスペースから借りることも可能なため、費用もリーズナブルで済みます。保管場所は郊外が多いですが、配送業者が運搬してくれるので距離を気にする必要はないでしょう。保管している荷物の内容はWebから写真で確認することができるようになっています。宅配型トランクルームのデメリットは、預けている荷物が必要になった時に手軽に自分で取りに行くことができないことです。運送業者に配送してもらうには、まずWeb等で手続きが必要となるため、その手間を面倒だと感じる人もいるかもしれません。また、荷物が届く日には自宅で待機している必要もあります。
このように、近年、利用者の増えているトランクルームには、様々な種類があります。中でも、最近注目を浴びている宅配型トランクルームは、自分で荷物の運搬をしなくて良いのが何よりの魅力です。社用車を所有していない企業が日常使用しない事務機器等を収納する場合にも適しているのではないでしょうか。トランクルームサービスを利用する際には、それぞれのトランクルームの特徴をよく理解し、最適なサービスを選択するようにしたいですね。